=第一章= |
城下町は怒号が飛び交い、城壁沿いの兵舎には兵士が縦横無尽に走る光景が見える中、 救護室にいるアドベルは落ち着いたものであった…。 自分の中で息引き取った男を前に、ただ、うつろに彷徨った男の視線の先を見定めようと、 アドベルは、骸となり、ベッドに横たわる男を見ていた。 「…、確かに、…メッセージ、送り届けた…」 骸の口がかすかに動き、その言葉が聴こえたような気がした。 「血の訪問、風の問い、雲の問い、光の問い、そして、祠の行方…ですね」 アドベルは、そう呟き、…壁に立てかけていた自分の武器を取り、背負う。 「アドベル!!」そこに大柄な男が息荒く、救護室にと入ってくる。 そして、また、アドベルは救護室にひとりとなった…。 そして、部屋を出るやと思いきや、アドベルは、背の剣を片手で持ち上げ、振り上げる。 ドン! と、骸の眠るベッドへ振り下ろす。 「これが、僕の開戦だよ…、」 そう呟き、アドベルは振り下ろした大剣をまた背中にと、背負い、部屋を後にする。 そして、その救護室に残っていたのは、…。 |