=第一章=
[A Hit of Hunch]
第28話・赤の25標

 

「[ADoBaiza]」イラブは一言呟く…。
 そして、「そうか、貴様、[ADoBaiza]か…」と、呟いた。
 アドベルは、イラブを見上げ、腰に力を溜める。
「…、そう、時間だ…」
 そのアドベルを見つめつつ、イラブは構えを取った。
 火炎球の効かないのも承知だ。だから、もうもはや、残された肉体で挑むしかない。
 そう考えつつ、アドベルを見て、尋ねるように、…だが、返答はないであろうと構わず、…尋ねるように呟いた。
「もう、本来であれば、我ら二人は、剣の勇者に相対し、力交え、遁走する予定。その時間だ…」
 アドベルが大きく、胸を怒らせ、縮め、そして、ドンっと、跳ねた。
「今、私は物語の外で[ADoBaiza]に殺される。しかし、…見せ場の一つである[サイクロプス]が剣の勇者に負ける頃も今だ…」
 アドベルが凄まじい勢いで迫るも、イラブの目には処刑のその時までゆっくりと感じながら、なおも返答のない問答を投げかける。
「お前は、私達の死と[サイクロプス]の死を同一とし、そして、この私達が産み出した集団を消す。そう、剣の勇者が全てを成し遂げたかのようにな…」
 アドベルの顎が開く。
「知らぬ展開だ。[ADoBaiza]よ…。これも筋書きか?、それとも…」
 その最後の言葉は、イラブに発する権限はなかった。

  もう、彼は、喉を、失っていたからだった。


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