=第二章=
[Arrested Princess]
第29話・赤の49標

 

  俺は今、何を…?

 心の中の奥底で見つめるアポロ自身が、今の自分に問うた。
 しかし、その口からは仲間を励ます言葉が響き、そして剣を振るう。

  待て、待て、…おい、…待て!!

 心の奥の奥の奥の自分が、叫ぶ。が、
 その口からは仲間を励まし、そして剣を振るう。

  !!?!

 意思とはなんだ?アポロは自分に問うた。
 刹那でも休もうと、足を止めようとしても、足は動き、息を整えるべく吐こうとすれば励ましが叫ばれ、そして、剣は駆け抜ける。
 自分の中に、何か別の何かが、…何かが、何かが!?

 そして、僅かに動く眼球がそれをとらえた。

  剣が笑っていた。

 語弊があるかもしれない。笑うはずがない。そう金属の塊だ。金属の塊が笑うというのはおかしい。
 だが、笑っていた。笑う口もないのに、

 その中、一筋の砂塵が舞う。剣が[AGOTOW]を滅したのだ。
 なぜ、アポロが視線を外したのに、的確と敵を倒し、仲間を励まし、そして、飛ぶ。

 視線だけが、めまぐるしくアポロの意思で動かせる。しかし、それ以外は。
  …それ以外は…。

  もはや、アポロの意志では動いてはいなかった…。のだ。


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