=第二章=
[Arrested Princess]
第31話・黒の32標

 

 巨躯の右腕が振りあがると、その巨大な鉄塊の長剣がなんなくに上がり、…最高潮に達した瞬間、重力の任せるままに振り下がった。もちろん、アポロにめがけて…だ。

  スゴンっという音と共に、捲れ跳ね飛び散る石畳、そして、巻き上がる土煙。

 巨躯の一撃がいかほどまでのものかを示す情景に、遠巻きに見つめる兵士魔術師達は息を呑んだ。
 もちろん、アポロはその一撃をなんなくと避け、巨躯の一歩外にと、体を置き、距離を持っている。
 だが、この余りに巨大な敵には、…自分達の武器や魔法では太刀打ちできない事をまざまざに見せ付けられたのも事実である。それと共に、アポロもまた、このような敵に勝てるのか…という絶望めいた感情をも抱かせた。


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