=第二章=
[Arrested Princess]
第33話・黒の34標

 

 抉れ散る石畳、…ふとすれば、その足場が砕け、足を取られるかもしれない状況の中、アポロは未だ戦いを続けていた。
 城に徴収された兵の中でも、比較大きな体躯を持つアポロには鈍重なイメージを持ちがちだが、その動きは機敏に的確で、それでいて豪腕を振るう。
 …が、しかし、今回の状況はいささか勝手が違った。

  その相手があまりに巨躯であったからだ。

 これまでの戦いであれば、疲れ知らずの運動量と的確な戦撃、王より託された紫の長剣は大抵の金属物質を軽々しく切り捨てる。形で、次々に戦果を上げていたわけだが、そのスケール全てが違いすぎた。
 巨躯の振るう剣の幅は、アポロの身長と胴回りを上回るため、切断が出来ず、またその盾も分厚く、アポロの剣が切り捨てるには、無理があり、その胴体の大きさは、建物二階ほどを持ち、アポロの身長をもってしても、足元を切り付けるかどうかである。

  …防戦。そう、彼は防戦を強いられていた。


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