=閉幕=
第8話・赤の153標

 

「私達は英雄などではありません」
 部屋に入るなり、…スティアがそう口に出した。…
「私達、3人は、…英雄などではありません」
「…」
 スティアが繰り返し、言う言葉に、クリスは背を向けたまま、無言を決め、…そして、
「アドベルは、…英雄…であった、と」
「それも、違います!」
 クリスの質問に、スティアは首を横に振った。その胸元には、黄色いリボンが、アドベルのリボンが握られていた。
「アドベルは、兄でした…。たった一人である、血の繋がったアポロを助けるために、アドベルは、たった独りで戦っていた。私たちを含め、皆を救うため、そして、アポロを救うため、…

  …でも、その行動は英雄ではない!ただただ、アポロを救いたいためだけに
  …全てに恨まれてでも、全てに蔑まれても、全てに認められなくても、
 
   その為に、その為だけに、アドベルは死んだ

 んです…。…」
 スティアの叫びが、部屋にこだまする。

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