=閉幕= |
「クリス…」 「私達の未来をくれた人は。私達に自由をくれた人は。私達が、恋し、愛した人は。もう、二度と…よ。私達の前には、来てくれないのよ」 クリスの軽口めいた強い言葉に、エディルの返事は、名前を呼ぶだけで精いっぱいだった。 「スティアにはいるのに、いつまでも独りにさせるの?いるのよ!いるならば、一緒にいてあげるべきよ!違わないでしょ!エディル!私は何かおかしい事を言ってるのかしら!エディル!!」 「違いません…。それについては、私も愚かでした…。スティア様も一緒に死んだ事にして、私一人で戻るべきでした」 クリスの叫びに、エディルはそう是正する。 「ごめんなさい。クリス…。本当に、ごめんなさい」 「…、…。…」 気丈に立つクリス。彼女自身も、アドベルを失った事実に、泣き喚きたいだろう。 それでも、彼女は泣かず、エディルを見つめ、それから、顔をそむけ、…背を見せた。 「私の方こそ、ごめんなさい。エディル。…私の我儘な言い分で、困らせたのですもの」 「我儘なものですか、クリス。…そんな事に気付かない私こそ、教育係、失格だわ」 そして、クリスの肩に手を置いた。 「…いきましょう。妹様が待っておいでですものね…」 「ええ、…」 なんとか吹っ切るように、涙が噴出しそうな面持ちであるけれど、妹のために、笑顔を作るクリス。 その表情に、…エディル自身も、悲しく微笑んで見せる。 「お着換え、お手伝いいたします。クリス…王女」 「ありがとう、エディル」 |