=記章= |
「敬礼!」 ケルバーの声が静寂たる謁見の間に響く。 居並ぶ兵士達がその左手を胸に当て、一律に足元をただし、列を立て直す。 そして、ほどなく、奥のカーテンより白いゆったりとしたローブを羽織ったマグデス王と、純白のドレス…の腰元にロングソードをくくりつけたクリス王女が現れ、王は玉座に座し、傍らにクリスが兵士達にと向き直る。 「直れ!!」 再び、ケルバーの声。 声と共に、兵士各位、胸にかざした手を離し、直立不動の体勢となる。 その居並ぶ兵士の数に、マグデス王は…少しばかり、眉を下げた。 数にして、20人ほどである。 もちろん、戦乱時でないのであるのだから、無理もないが…。 警備の面を考えても、いささか人数に不安を覚えてしまう。 「それだけ、世が平和になったという事だな…」と、ポツリ失言じみた言葉をクリスにも聴こえぬように、唇を動かさず、漏らしてしまう。 |