=記章= |
そこに立つ者は、アポロのがっしりとした体躯と比べるべくもない貧弱な体躯であった。 顔立ちも凛々しいというものではなく、妙な程に柔らかさをみせるふっくらとした頬に潤いを湛える薄桃色の唇、中に星でもまぎれていそうな大きな赤い瞳と、男というよりも、女性を思わせる、…むしろ、クリスさえも溜め息を覚える若い女性の美顔ともとれるだろう。 そして、この群雄の中においてひときわ目立つ長大な赤髪をこれまた、男性否定をするような大きな黄色いリボンでポニーテールにまとめ、まわりが金属甲冑だというのに、この者だけが、皮で出来た部分鎧という、いかにも体躯に問題がありそうな装備であった。 「アドベル?…して、その方は、エラブ殿の…」「エラブおば様の実子です」 あまりの弱々しさを見せる有様に苦言じみたマグデス王の問いにアポロがそう答える。 「…すると、この者も、ガイストの子であるのか?」 アポロの答えに、少々驚きの表情で持って、さらに問いただす王。 「いえ…」しかし、アポロは首を横に振った。 「エラブおば様は、私の母親ではありません」 |