=第二章=
[Arrested Princess]
第18話・黒の29標

 

「アポロさん!!」
 もはや風前のごとき、気力さえ無く、死を迎える気であった同期で城兵となった男子が叫ぶ。
「持ちこたえろ!俺が引き付けている間に、怪我人を後ろに回し、バリケードを立て直せ!!」
「は、はい」
 幾度目かの魔法転移による精神疲労と戦闘疲労にうっすらと汗を額に浮かべるアポロは叫び、紫発光する剣身を目の前の[AGOTOW]の軍勢にかざす。
 戦闘意思を見せた瞬間、一体の[Thig]が飛び出す。が、アポロも反応早く、一閃。
 その個体が霧散する。瞬間、怒涛に押し寄せる[AGOTOW]。

 ただ、アポロは最初の一匹を消し飛ばした後、一息ばかり吸い、剣身を後ろに引いた。
 剣身に紫電生まれたかと思うと、それから、豪快に空を横凪ぐ。
 その剣先より紫電は飛び、弓なりの紫光が放たれた。
 その紫光に凪がれていった[AGOTOW]は一瞬、体を強張らせ、霧散する。
 さらに、アポロは踏み出し、残る十数匹の[AGOTOW]の軍団にと飛び込み、その全てを消し飛ばした。

 無傷…のアポロが一息つき、「ケルバー長より伝言!敵の総数も少なくなっている。皆、がんばれ!とのことだ!!」後ろで待機していた兵達に激励をした。
「はい!アポロさん」
 最後までアポロの戦いぶりに高揚感を持った男子兵が返答する。
「俺は次のポイントの援護、伝令に飛ぶ!!」
 男子兵の返答に頷き、アポロは叫ぶ。そして、最後に苦いながらも笑顔で持って「死ぬなよ」と、伝えた。
 瞬間、アポロの体が魔法光に包まれ、その姿が消える…。
「みんな!あと一息だ!頑張ろう!!」
 男子兵は、気丈を震わせ、回復魔法である程度に回復した兵に激励を飛ばす。
「おお!」「もちろんだ!!」
 兵たちもまた、アポロの戦いぶりに奮起したようで、傷つく体を押し上げ、立ち上がる。

  次に迫りくるかもしれない軍団に備えるため、再び、活力を取り戻した。


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