=終章=
[終焉との決別]
第7話・黒の53標

 

 対峙する男とアポロ。
 抜き身のままに立つアポロを見定めるように、見ていた男はその右手を左の腰に差す剣柄にかけ、その細剣をするりと抜き、眼前にと構えてみせる。
 先に動いたのは、男。
 構えた細剣を水平に、アポロめがけて刺突を繰り出す。
 それを、アポロは半身を引き、突き出される剣を叩き切らんばかりに自らの剣を振りさげる。
 ギンッという、乾いた音が響き、男の体が軽く揺らぐ。ように見せかけ、その体を回転、切っ先が真円を書くように動き、アポロの首をかっ切らんと、今度は振り下ろしを繰り出した。
 もっとも、落ち着いているアポロにはどうした事でもなく、無駄を感じられない剣さばきで、弾き飛ばす。
 2連撃を外した男の体が今度こそ、大きな揺らぎを見せる。その隙をアポロは、一歩、力強くふみだし、心臓を切り裂くばりの踏み込み切り上げ。が、空を切る。
 揺らぎに見せ、跳躍に変えたのだろう。男の体は幻影でも見るように、すでになく、トンっと十数歩先に、舞い降りた。
 振り上げたアポロの剣に紫電が走る。食いしばらん限りの表情でもって、紫電発光のかまいたちを振り下ろしで作り出し、距離を開けた男にと打ち出した。
 襲い来る紫電かまいたちを受ける訳もいかない男は、距離を開けんとその場を高く跳躍する。

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