=終章=
[終焉との決別]
第13話・黒の55標

 

 氷の槍がアポロの脇腹をかすめる。
 かすめただけであるのに、強大な槍撃であったから、アポロの体の自由をさらう。
 よろめきを逃すはずのないよう、氷の槍が次々と突きあがり、彼の体を舞い上げた。
 凍傷を伴う裂傷にまみれ、アポロが地面に落ちる。
 叩きつけられ、はずみ、…転がる。
 それでも、剣を持つ手ばかりは、…これだけは離すものかと…、しっかりと握られ、うつぶせに倒れた体を起こさんと、四肢を引き寄せ、力はいらないようにがくがくさせながらも、体を浮き上がらせる…。が、ずるりと、地面に落ちた。
 男は悠然と、満足げに、少し離れた位置で潰れるアポロを見下し、剣を鞘に悠然と戻し、その開いた右の手の平を宙にと振り上げる。
 それと呼応するように、周囲の水分が凍結していき、吹雪き、男の上部にと包まるように集う。
 ビュービューと吹きすさぶ中、アポロの体にも霜が積もりだした頃、
 男の上部には、まるで小山を思わせる程の氷塊が産まれていた。
 もちろん、それはアポロの墓標とするために作り出した。
 …十分な大きさ、それを打ち込めば、いくら大柄なアポロとて、肉片一つ残さないであろう。
 出来栄えに満足そうな笑みを浮かべ、男はその手を振り下ろした。

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