=終章= |
氷の槍がアポロの脇腹をかすめる。 かすめただけであるのに、強大な槍撃であったから、アポロの体の自由をさらう。 よろめきを逃すはずのないよう、氷の槍が次々と突きあがり、彼の体を舞い上げた。 凍傷を伴う裂傷にまみれ、アポロが地面に落ちる。 叩きつけられ、はずみ、…転がる。 それでも、剣を持つ手ばかりは、…これだけは離すものかと…、しっかりと握られ、うつぶせに倒れた体を起こさんと、四肢を引き寄せ、力はいらないようにがくがくさせながらも、体を浮き上がらせる…。が、ずるりと、地面に落ちた。 男は悠然と、満足げに、少し離れた位置で潰れるアポロを見下し、剣を鞘に悠然と戻し、その開いた右の手の平を宙にと振り上げる。 それと呼応するように、周囲の水分が凍結していき、吹雪き、男の上部にと包まるように集う。 ビュービューと吹きすさぶ中、アポロの体にも霜が積もりだした頃、 男の上部には、まるで小山を思わせる程の氷塊が産まれていた。 もちろん、それはアポロの墓標とするために作り出した。 …十分な大きさ、それを打ち込めば、いくら大柄なアポロとて、肉片一つ残さないであろう。 出来栄えに満足そうな笑みを浮かべ、男はその手を振り下ろした。 |