=閉幕=
第1話・黒の63標

 

 ー城壁が見える。
 あれから、二日ほどの道のりを、エディルとスティアは馬車で戻った。
 軽快ではない、鈍重な足並みで馬を進め、…ていたが、それでも、城壁が見えてきた。
 手綱を持つエディルは、口元をかみしめる。…そして、弱く震える声を振り絞り、帆の中で疲れ崩れるスティアに声をかけた。
「もう少しで到着します…」
「…、…。…」
 スティアは答えない。ただ、その言葉に身を縮め、頑なに拒むよう、…うずくまり…。
 そう、そして、馬車が、城壁手前の橋の袂にかかると、城門が音を上げ、ゆっくりと開きだす。
 帰還するのを、歓迎するように。

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