=第4章・第38部=
始まり

 

「馬鹿なら馬鹿にできる朝のような元気さを出してくださらない?お兄様が認めたお二人なのに、そんなしけた顔、いつまでもお兄様に見せないでくださる?お兄様まで、元気がなくなるじゃない…」
 美矢の言葉に、奈々美は、えっ、とした顔を漏らし、久美も少々驚いた顔で、美矢を見た。
 当の美矢は横目を前に戻し、「結局、自分で出来る事は限られてるのよ。今できる、自分の精一杯をしてなさい」と、言葉を締める。
 奈々美は、視線を何気なくな様に、真吾に向けた。
 三人を様子を黙って見ていた真吾は、奈々美の視線に、見える口元を優しくゆがめ、軽くうなずいてみせた。
 その真吾の行動に、奈々美は軽くうつむき、キュゥっと口元を紡いだ後、…顔を上げ、昨日にも見せていた、…いつもの笑顔で真吾を見返したのだった。

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