=最終章・第三部=
=最終日=

 

 奈右闇とラナの姿はとうに無く、今、その場にいた、久美と知美の姿も消え、
 昭汰は一人、何もなくなった白い空間に取り残される。

「昭汰さん」

 「兎萌さん」

「お別れを言いに来ました」

 「…、そうか、僕はもうこの町を去らないといけないのか」

「…、…」

 「ありがとう、兎萌さん」

「昭汰さん…、」

 「僕は、あなたに会えて、良かった…。正直、僕はもう、マジシャンとして、やっていけるかどうかの、自分でも、自信が無くなっていた。でも、君に会えて、久美さんにけなされて、奈右闇さんに励まされ、そして、この学園で、僕はまた、マジシャンとしてやっていけそうな気がする」

「昭汰さん、あの…」

 「僕は、この町での事を忘れたくない…。忘れたくは無い。でも、駄目なんだね。僕が、この町を去った時、僕の記憶から、この町は消えるんだね」

「…、…」

 「確かに、僕の記憶は無くなる…。でも、この町で、僕がマジシャンとして腕を振るった事実は消えない。消えないんだよね」

「ええ、…そうよ」

 「兎萌…さん、僕は、今本当に、君の事を忘れたくない…。この町の事も忘れたくない。でも、僕は、結局、外の人間だ…。その違和感は、僕は拭い去れない気がする。だから、この町に残れない」

「…、…」

 「ありがとう、短い間だったけど。…本当に、ありがとう。…」

「昭汰さん」

 「外部の人間だからこそ、心引かれるというもの、かな。そんな出会いだったんだろう。君に、好意を持ったのも、そういう事かもしれない」

「私も好きでした、昭汰さん!!」

 「…、…。ありがとう。きっと、僕は、…その事実を忘れてしまうだろうけど、…でも、ありがとう」

 

   …、…、…。

 

 「兎萌…。これからも、お元気で…、さようなら」


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