かつては…新緑に満ちていただろう…
今はそれさえ疑うほどの痩せこけた木々が節くれだった手のようになり、私達の行方を遮っていた。
自分たちの命運を危ぶむかのように…空が泣き、荒み、雲さえも戦慄いているようだった。 激しく降り荒ぶ雨、響く雷鳴…、しかし、その唸りは、それだけではない。
私達の行く手は暗闇と雨に閉ざされ、見えないはずなのに、…
…そうであるはずなのに、その存在を認識できた。
ゴゴーーーーン!!
突然、稲光が轟き、それがうごめく様を垣間見る。
昔は、人々に恵みと優しさを施してたであろう巨木…その残骸でさえ、
…それの前では、ただの雑木にしか見えない…それほど、それは巨体であった。
雨が…私達を遮るようにどんどん強さを増す。
その存在から、私達を隠し、…守るかのように…
神の御心か…、そう呟く…者もいた。
その場にいる全員が雨にぬれる帽子から滴る雫を見つめながら…それをみる。
豪雨の騒音が掻き消えるかのような唸りが漏れ、それの口から蒼白の煙に似た息が漏れる。
獲物をいまだ発見していないだろう…その瞳にも威圧を感じた。…
一人の魔術師が1歩、踏み出す。
決意は変わらない…。私達はそれを倒すために訪れたのだから…
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