=序章=

 

 青い草原の中、二人の子供が遊んでいた。一人は赤髪の少年。一人は黒髪の少年。
 そして、遊びつかれたのだろう…。二人は風でそよぐ草原の上に寝転がり、弾む息を落ち着かせるように、大きな深呼吸を思い思いに行った。
「ねぇ、アポロ」
 赤髪の少年が整えた息で、黒髪の少年に話しかける。…と、蒼天を見つめていた黒髪の少年が、その言葉に顔を赤髪の少年に向け、「何、アドベル兄さん」と、言葉を返す。
「アポロは、大きくなったら、何になるのかな…と、思って、…僕は、お城に出向こうと思ってるんだ」
 黒髪の少年・アポロの返答に、赤髪の少年・アドベルは空を見つめたまま、そんな事をうそぶく。
「城に出向くって、兄さんは、…兵隊になるつもりなの…」
「…、…。ん、…。それで、アポロは?どうするの…。」
「僕…、僕は…」
 そのアドベルの言葉に、アポロは少しだけ眉をひそめたが、次にかけられた問答に、口ごもり…。
「じゃあ、僕は、父さんみたいな英雄になって、お姫様と結婚でもしようかな」
 と、ちょっとだけ無理をした感じの返事をした。
「…、そっか。…ふふ、そうかぁ…。凄いなぁ〜」
 その言葉にアドベルは、やさしく笑い、「じゃあ、アポロ」と、言葉を続ける。
「もし、アポロが英雄になったなら、僕は、君の一番の兵士にでも取り上げてもらおうかな」
 アドベルの言葉に、ただただ、アポロはこまっしゃくれた口調で「楽しみにしててね」と、笑ってみせた。

  それは、…十数年前の、ある山奥にある小さな小さな農村での出来事であった。


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