=記章=
[The Beginning]
第6話・黒の6標

 

「敬礼!」
 ケルバーの声が静寂たる謁見の間に響く。
 居並ぶ兵士達がその左手を胸に当て、一律に足元をただし、列を立て直す。
 そして、ほどなく、奥のカーテンより白いゆったりとしたローブを羽織ったマグデス王と、純白のドレス…の腰元にロングソードをくくりつけたクリス王女が現れ、王は玉座に座し、傍らにクリスが兵士達にと向き直る。
「直れ!!」
 再び、ケルバーの声。
 声と共に、兵士各位、胸にかざした手を離し、直立不動の体勢となる。
 その居並ぶ兵士の数に、マグデス王は…少しばかり、眉を下げた。
 数にして、20人ほどである。
 もちろん、戦乱時でないのであるのだから、無理もないが…。
 警備の面を考えても、いささか人数に不安を覚えてしまう。
「それだけ、世が平和になったという事だな…」と、ポツリ失言じみた言葉をクリスにも聴こえぬように、唇を動かさず、漏らしてしまう。

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