=記章=
[The Beginning]
第16話・赤の4標

 

「トゥア様、よろしいですか?」アドベルは、姿からしてクリス王女の妹であろうと推測し、言葉を選ぶ。
「チロルは、旅鼠の一種でお風呂と言うのを嫌います」
「ええ〜、お風呂に入らないと汚いよ〜」
「いえいえ、ですから、チロルを湯浴みさせるのではなく、水浴びさせればよろしいのです」
 アドベルの言葉にプ〜っと頬を膨らませたトゥアであったが、「水浴び?」という言葉に、頭を傾ける。
「ええ、…水浴びです」やっと、答えに辿り着かせたアドベルは胸を撫で下ろし、言葉を続けた。
「よろしければ、私めも御一緒に探させていただけますか?そして、一緒に水浴びをさせたいと思うのですけれど、よろしいでしょうか?」
「…、」アドベルの申し出に少しキョトンとした表情を見せた後、トゥアの顔に満面の笑みが浮かび、「うん」と、大きな返事が返ってきた。

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