=記章= |
瞬間、何が起こったのか分からなかったアドベルだったが、トゥアはお構い無しに沈むチロルを子供の力で力いっぱいの手もみを始めた。 「あ、ちょ、ちょっと、トゥア様。待って、待ってください!!って」 事の次第に思考が追いついたアドベルは、少しばかり強めの口調でトゥアを押しとめる。 アドベルの声に、「ふえ?」という疑問符を浮かべながら、トゥアがチロルを掴む手を止め、見上げた。 自分の言う事を聞きとめてくれた事に、アドベルは胸を「ほっ」とさせて、ちょっとばかり失神しかかったチロルを掬い上げて、たぶん、背中であろうほうを軽くさすりながら、トゥアを見て、諭す口調で説明する。 「いいですか。トゥア様。チロルは生き物です。私共と一緒です」 アドベルはそこまで言った後、トゥアがちゃんと自分の言葉を聴いてくれてると、確認した後、言葉を続けた。 「トゥア様も、他の誰かに、ゴシッ!ゴシッッ!!、と、体を洗われたら、嫌でしょう?チロルも一緒なんですよ」 アドベルの言葉に、トゥアは少しだけ、ホケっとしてたが、再度、アドベルの「ゴシッ!ゴシィッ!」と、再度見せられると、「うん…」と、頷いた。 「良かった…」アドベルはホッとして、それでは。と、 「では、トゥア様。今度はやさしく、撫でながら、ですよ」 そう言いながら、手の中のチロルをそっと手渡した。 |