=第一章=
[A Hit of Hunch]
第3話・黒の15標

 

 ケルバーが退出し、幾刻と後か、王の自室のバルコニーより臨める城下町を含め、城中庭に人々が押し寄せる。
 喧騒、怒号、悲鳴、泣き声…。入り混じった暗く悲しい音響が、王の耳を打ち、目を暗く眩ましていく。
「…この戦い、…如何ほどのものか…。そして、…幾人が死んでいくのか…」
 …呟き、目を伏し、…それから、自らの部屋を顧みた。…
 ケルバーもいなくなった部屋は執務以外に使う事のなくなった自室である。
 その昔は、妻であるマリア女王も住まう部屋であった。
 その妻が居なくなり、…久しく、気持ち向き合わず、…避けてきた部屋に、
 再び、足を踏み入れた…。

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