「ディアアアア!!」 
         マグデス王は怒声と共に、手に持つロングソードを横なぎに振るう。 
         一閃。 
         剣の軌跡の先にいた[Thig]共は首と胴が離れ、どぉうっと、倒れる。 
         そして、その体から微かな湯気が上がると、一瞬にして土くれと化していった。 
         だからといって、奴らは怖気づく事もなく、大軍勢を勢いに、押し寄せる。 
        「王、出すぎです!!一歩お下がりください」 
         次々と遅い来る[AGOTOW]の一群を先頭に立ち、薙ぎ払い続けるマグデス王の行動に、後方を守るケルバーがいさめの言葉を投げかける。 
        「むう、…すまぬ」 
         王も気づいたのだろう。一度だけ、孤を描く剣を浴びせ、軍勢より一歩引く。  そびえる城壁を背後に後方部隊が遠方の[AGOTOW]へ長弓での矢の雨と強力な炎氷の散開掃射魔法を繰り出し、乗り切った手勢を先陣隊がこれをなぎ払う。 
          だからといって、[AGOTOW]の軍勢は気おされる事もなく、死の恐怖等無いとばかりに、行軍を続け、城壁の城門を破壊しようと迫りくる。 
          始めのうちには、拮抗を保っていた両軍の陣営であったが、それは徐々に崩れつつある。 
          途切れる事のない[AGOTOW]軍勢は勢い衰える事無く、北方より現れる。 
          そう、徐々に、城の軍勢は押され、こじんまりとし始めていた。 
        「ケルバー。状勢は」 
        「芳しくはありません」ケルバーの率いる大隊の前にまで引いた王の質問にケルバーは苦言を述べる。 
        「奮闘はしておりますが、…近戦部隊の数隊が、既に撤退体勢です。このままでは、城門前を捨てる他ありません」 
        「そうか…」 
         ケルバーの言葉に、王は唇を占める。そして、ケルバーに一つの伝令を発した。 
        「無謀な事ではあるが、今より個人遊撃部隊を編成伝達せよ」 
        「個人遊撃?」 
        「そうだ。この尖兵どもは捨て駒よ。遠方へ向け、雨霰と攻撃するのは、そこにこの尖兵を魔力で生み出す者が隠れており、それを討ち取る為だったが、…昔のようにはいかぬようだな」 
         王はまた、数体を薙ぎ払うと剣を構えなおし、ケルバーに言葉を続ける。 
        「伝令内容は、中隊以上で志願者1名ずつ。陣形より突出し、周囲の魔力者の捜索、発見による排除行動。同一遊域が合わさらぬよう、遠視連絡魔法を扱える者を城壁上に集め、指示を出させよ」 
        「分かりました。では、この部隊からは」 
         王の言葉にケルバーが自らがと、名乗り出るよりも先に「わしが出る」と、王が言った。 
        「何、この[AGOTOW]との戦闘、唯一、その術を全て知る者が突入するが、効率が良かろう。このような輩に負けるようで、何が王よ…。ケルバー、総指揮を任せたぞ」 
        「マグデス王!!」 
         ケルバーが、走り出す王を止めようと、声を張り上げた。… 
          しかし…、王は既に、[AGOTOW]のひしめく軍勢の中へと消えていたのであった…。 
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