=第一章=
[A Hit of Hunch]
第11話・黒の22標

 

 アポロは、少し判断に迷っていた…。
 部隊長から、志願兵一人を募る、というものに、…。
「誰か居ないのか…。」
 少々、怒気を散りばめた諦めの言葉を漏らす隊長の言葉に、誰も答えない…。
 本当ならば、部隊長自ら、出陣しようとはしていたが、いかんせん、部隊が疲弊し、
 今、指揮官が抜ければ、たちまちに…壊滅するだろう事が明白であった。
 だから、この中隊からは、志願兵は出せない…、と、思ってはいるようだが、その視線は…。
 アポロに軽く向けられていた…。

  体格も大きく、並外れた体力と、臆する事のない気力、その全てが充実していた。

 だが、彼がいるからこそ、今、部隊が持ちこたえているのも事実だとも言えるから、隊長も強くは言えないでいるようだ。
 アポロ自身も、志願する気はほぼないので、隊長の視線を気にしながらも、対峙する[AGOTOW]に視線を合わせる。
 切りのない軍勢…。確かに、切りこみ隊を編成するのもうなずけるが、…確証がない…。
 アポロ自身、保身を第一とし、守る要として、努力しようとした。…

  …が、その思いが揺らぐ…。

 きっかけは、[AGOTOW]の軍勢の中に、見えたからだ。

  真っ赤にたなびく、長い髪が…。

「まさか…、」
 目の前の[AGOTOW]を切り倒した後、自問をかけ、…そして、軍勢に視線を向け、背にいる隊長に宣言した。
「隊長、…私が志願します。…よろしいですか?」


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