=第一章=
[A Hit of Hunch]
第24話・赤の21標

 

 [AGOTOW]の流れる海で巻き起こる風でもって、着弾点の煙がかき消されていく。
 今までなかった大きな窪地がそこにあり、抉られた中央には何もなかった。
 そう、アドベルは、…そこにはおらず、その窪地の後ろにといた。
 爆発で飛ばされた…のではなく、スクッとした立ち振る舞いで、そこにいた。
 しかし、それがアドベルだというのか…。

  そこにいたのは、異様な物体であった。

 アドベルの体躯ではない、ガッシリとしたものでその露出した肌には紫の鱗がびっしりと埋まる。
 黄色いリボンはどこかへ吹き飛んだのだろう。長い赤い髪は広がり、風になびいていた。
 いや、風になびいているならば、一定方向にまとまろうと流れているはずだ。
 その赤い髪は、アドベルの後方に大きく広がり、まるで大きな翼を思わせるような広がりをみせていた。
 そして、その顔は…。
 もはや、美しさなどカケラもない。醜くひしゃげた豚のような上面と馬のように長く突き出た口。
 その鼻先の下からは大きな牙が伸び、誇示をしていた。
 まるでそれは、ドラゴンの顔の、できそこないを見ているような…、そんな顔であった。


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