=第二章= |
別邸は、城の東側に建つ、高い塔を備えた石造りの建物である。 元々は、刑収容所を兼ねていた物であったが、[AGOTOW]との戦乱の末、その強固さを利用し、医療施設と食料保管施設を両設するものとなった。 「ご苦労様」 その扉の警護に立つ二人の男性兵へ労いの言葉をかけつつも、クリス王女はその足早さは変えず、中へと入っていく。 が、まだ、戦中であるかの如き、呻きと怒号が響く建物内に、目を奪われて、クリス王女は軽い立ち往生をした。 むせ返る血の匂い…。激痛の戦慄き。そして、…それでも、治療の間に合わなかった者が外へと運び出される慌しさ。 医者と看護の交錯する声とさらに、兵との物資交渉を伴う声と、… 未だ、癒えない傷だけを押し込んだかのような…身の毛の凍る光景が広がっていた。 「これはクリス王女、どうされました」 |