=第二章= |
「あ、お姉ちゃん」 そんなアドベルの態度に首をかしげ、それから、クルリと後ろを見たトゥアが嬉々として、声を張り上げる。 「これ、お姉ちゃん!」 と、ブンブンと、手を振り、クリス王女の元へ駆け寄っていく。 そんなトゥアが足元に来て、さも嬉しげに差し出す、自分を描いたであろう用紙越しにそんな幼子の顔を見つめ、それから、フッと笑って見せた。 「ありがとう、よく描けているわよ」 戦時中、…ここは咎めるべきであろう、…下にいる者達を思えばこそ、だが…。 クリス王女は敢えて、そのような事をしなかった。 トゥアもまた、王女なのだ。 自分が戦時に立ち、居なくなった時、もうトゥアしかいないのだ。 クリス王女は、そう考え、優しく微笑み、トゥアの頭を撫でてあげる。 「トゥア、お姉ちゃんはね、少し、アドベルさんとお話がしたいの。だから、向うの方で静かにお絵かきを続けなさい」 |