=第二章= |
アドベルの言葉に、クリスは唇を結び、息を詰まらせた…。後、やっと、「…、アドベル、本当に、貴方は何者なのです…」という、その言葉を搾り出した。 「裏切り者です」 今までの経緯から答えはないと分かっていたクリスにとって、そのアドベルの返答は唐突すぎるものだった。 「全てが終わるまでは命ある、裏切り者です。全てが終われば、どのような結末を迎えようと、命を失うだけの…。でも、この裏切りは、きっと、間違いではない。アポロを救う為、王女姉妹を救う為、この国の人々を救う為、僕は間違ってはいない」 見つめる瞳を外し、それから、歯軋るように噛み締めてから、アドベルは言葉を続ける。 「王女、これが、今出来る、僕の答えれる、精一杯の言葉です。言葉なんです」 そこまで発し、歯軋り、拳握り、空を睨む。 その様に、クリスは口を噤み、 「トゥアの救出。協力者は必要?私は、何か出来ることはあるの?」 アドベルを問いただす事をやめた。 |