=第二章=
[Arrested Princess]
第14話・赤の37標

 

 アドベルの言葉に、クリスは唇を結び、息を詰まらせた…。後、やっと、「…、アドベル、本当に、貴方は何者なのです…」という、その言葉を搾り出した。
「裏切り者です」
 今までの経緯から答えはないと分かっていたクリスにとって、そのアドベルの返答は唐突すぎるものだった。
「全てが終わるまでは命ある、裏切り者です。全てが終われば、どのような結末を迎えようと、命を失うだけの…。でも、この裏切りは、きっと、間違いではない。アポロを救う為、王女姉妹を救う為、この国の人々を救う為、僕は間違ってはいない」
 見つめる瞳を外し、それから、歯軋るように噛み締めてから、アドベルは言葉を続ける。
「王女、これが、今出来る、僕の答えれる、精一杯の言葉です。言葉なんです」
 そこまで発し、歯軋り、拳握り、空を睨む。
 その様に、クリスは口を噤み、
「トゥアの救出。協力者は必要?私は、何か出来ることはあるの?」
 アドベルを問いただす事をやめた。

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