=第二章=
[Arrested Princess]
第22話・赤の43標

 

 ウラブの高々に振り上げる左腕。それが振り下ろされた瞬間、指先にあわせた風の斬撃が生まれたのだろう。
 敷き詰められた石畳に5本の鉤爪痕が現れたかと思うと、アドベルに向かい、一直線にとスジが石の削り音と共に、伸びていく。
 目に見える程の攻撃に、アドベルはなんなくと横ステップでかわす。
 刹那、

   …ブラン…

 と、彼の左半前に構えていたその左腕付け根から、腕が・・・残った筋繊維だけ繋がった状態で垂れ下がった。
「悪いけど、名乗り口上だけよ。ここにまで過剰の演出は必要ないもの」
 そうほくそ笑むウラブの右手、その人差し指は何かを弾いたような形で決まっていた。

 そう、彼女はアドベルの避けた先にそっと風の指弾を打ち出していた。
 その指弾をアドベルは受け、

  左腕と…心の臓を潰されていた…。


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