ドサリと倒れるアドベルをよそ事に、ウラブはハァ…と毒づく。 
        「まったく、[ADoBaiza]の真意を聞くべく、用意した場であるのに、早々に立ち去るとは…ね。」 
         そして、倒れ血潮の海に浮かびだすアドベルを横目で見、もう一つ毒づいた。 
        「時間稼ぎに、Extraまで使うとは…、よほど暴露を避けたい案件でも考えていたのかしらね」 
         そして、その踵をスティアが向かったであろう階段にと向ける。…刹那、 
         彼女が肢体を大きく屈めた!  逃げ遅れた髪の切れ端が彼女の眼前に舞い落ち、 
          そして、その屈めた目の先に大きな体躯が降り立つ…。 
         もし、あの場、悠然と歩いていけば、確実に自分の胴は無くなっていた。そう感じずにはいられない存在がそこに立っていた。 
         紫の鱗に埋まる大型の体躯。その赤い髪は翼のように広がり、顔は醜きドラゴンもどき。 
        「…なんと、」たぶんにまでは驚きはせず、ウラブは半身を後ろに、その目の前の怪物に警戒を張りつつも、視線をアドベルの倒れる血の海に向ける。 
         もちろん、そこには…アドベルの持っていた大剣と血の海があるだけで、肝心なる彼の死体は無くなっていた。 
        「…、ああ、なんともまぁ、…そういう事ですか」ウラブは警戒を強めるように視線も目の前の怪物に向け、溜め息を見せる。 
        「今回の物語、[ADoBaiza]候補には、二人いた。そうですが、…まさか、二人で及ぶとは、…まさにストーリー違反。これを隠したかった案件の一つなんですね」 
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