=第二章=
[Arrested Princess]
第25話・赤の46標

 

 ガキン!と金属音が響く。
「何?」風の刃の不思議な手応えに、ウラブは眉をひそめ、さらに新しい風の刃を連続に放つ。
 その何十とも言える刃は蒸気を切り裂き、周囲を晴らしながら直進し、アドベルの立っている場所へと飛来した。が、固い金属音が鳴り響き、晴れた蒸気の中からそれが姿を現した。

 そそり立つは鈍鉄色の壁だった。明らかにそこになかった金属質の物質である。

 その有様に一瞬の困惑を見せるウラブを前に、その金属物質の中央部分が真っ赤に湯立ち、光黄色に一瞬で変化が見えた瞬間、彼女は危険を察知し、地面に降り立った。
 瞬間、その彼女のいた場所に、真っ白い炎が通過し、見張り台の一部を消し飛ばす。
 そのぽっかりと空いた穴からアドベルの顔が覗け、…その口元には、炎の吹き残しで毛羽立っている。
「…、つまり、アラブ達を吸収したのか…」
 強力な炎の攻撃に、ウラブは喉を鳴らした。その一瞬の硬直が、命取りになった…。


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