スティアは場の惨状に身構える。
アドベルの考えに賛同し、トゥアを見つけ、一刻とも待たず、城へと送り戻した後、再び、見張塔に訪れた。
アドベルを助ける事と、敵の撃破を胸に、… それがどうであろう。
あの後も戦闘があったのは確かだ。だが、どのような事があったのか…。
敵対していた女の姿はなく、大穴を空けた金属塊が部屋中央に、さらに穴の線上の壁にも太々しく細長い金属塊が壁に垂直に刺さっている…その前に、左上半身を切り裂かれたアドベルがうつ伏せで倒れ付していた。
「!まずいわ!!」
アドベルの状況に、あせりつつも、周囲にあの女がいないかを気にしながら、駆け寄る。
罠も考慮する中、思いの他、すんなりとたどり着き、心臓の鼓動を伺えるよう手のひらを背にかざす。
若干、弱まりつつあるが鼓動の聞こえる事へ安堵し、急いで修復魔法を施す。
魔法を行いつつも、周囲に警戒を張り続けるも、…その気配はない。
「…、…つまり、は…。アドベルが追い払った?」
…にしては、あまりの深手である。相打ちにでもしない限り、このような怪我は起こらないと、彼女は考えるが、相手の屍骸も見当たらない。
では、完全なる止めを刺さずに、場を後にした?…
なぜ、場を後にする?城に攻め入った、とでも?…
それも、どこか考えづらい…。なぜなら、あの時、アドベルは自分を呼ぶ為に、王女はさらわれた、という説明をもらっていた。それで城を攻める用が生まれる?事でもあるのか?
不可解な、不可解すぎる状況に、彼女は眉をひそめつつも、アドベルの身体修復を終えた。
ただ、もう辺りには、女の気配がないのは確かだ。追いかける術もない今、…撤退するだけであり、スティアは直ぐに移動を行った。
見張塔に残ったのは、…ただただ、何かしらの戦闘が行われた傷跡だけが残されていた。
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