=第二章=
[Arrested Princess]
第38話・赤の51標

 

「アドベルの容態は、安定しております…。しばらくもすれば、目を覚ますでしょう」
 そう、スティアがアドベルの顔を覗き込むクリスに述べると、「…そう、」とだけ、受け答えをしてみせた。
 大規模な、…そう、大規模な市街戦を終えた、数時間後、再び、クリスはアドベルの眠る場へと訪れていた。
 アポロの活躍の他所事で行われたトゥアの救出作戦は、あっけも無い様に終了した。
 その代償は、アドベルの瀕死等に括るにはあまりに幼稚に思える程の…なぜ、死んでいなかったのか?と、疑問を感じる怪我をしていた事だった。が、それもスティアの修復魔法にて、一命を取り留めたようである。
 安静の寝息を見、スティアはアポロの元へと駆けつけたのだが、…。
 トゥアの安否と市街戦を終え、一息つかずに行動をしようとしたクリスに同行する形で彼女もアドベルの前に立っていた。
「ねえ、スティア。王宮最高位魔術師でもあるあなたならば、アドベルの言った言葉の意味が分かるかしら…」
「彼が言った言葉?ですか…。それは何でしょうか?」

 「Player」

「プレイヤー…?、さて、私も多くの見聞に通じているとは思っていますが、…プレイヤー…」
「ごめんなさい、知らなくても仕方ないわ。私も、お父様であったとしても、…きっと、分からない言葉だわ」
「それを、アドベルが語った、と?」「ええ、…」「…、…。…」
 眠るアドベルを見つめる二人。思惑様々に、それでも、口に出しそうな何かを二人は押しとめ、

  ただ、アドベルの目覚めを…待っていた。


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