=第二章= |
アドベルが目を覚ましたのは、それから日入り月光の輝きが薄雲に仄かと隠れる真夜中であった。 そして、目を覚まし、二人に見つめられるアドベルの第一声は、「…えっと」であった。 「…アドベル」 その、どこか演技臭さの見えるアドベルの言葉に対しても、クリスはただ平静に冷静に、そして、言葉をゆっくりと考え選び、選び抜いた言葉を、ただただ、ゆっくり…と、彼に、吐・き・捨・て・た。 「次は何をすれば、よろしいのか。知っているのでしょう?」 その言葉には、スティアも目を剥くほどの驚きを口元に見せたが、アドベルもクリスも無感想な表情でもって、お互いの顔を見つめ合わせていたが、…先に顔自体を逸らしたのはアドベルであり、彼は、「次です」と、言葉を発した。 「次で、終わります。王女、次で役目が終わります」 「役目?あなたの役目、ですか?」 「全ての役目が、です」 「…、そう」 言葉少なく、そんな返事だけをかえしただけの、アドベルへ、クリスは優し気な応答だけを返してみせた。 しかし、二人の会話に何事もない終わりは、来ることはなかった。 |