=第二章= |
突如、部屋に稲光が走る。しかし、その稲光には付き物と言える轟音は無く、部屋を破壊するほどの電撃にも見えたそれは、アドベルの体に被さる毛布だけを焼き破り、まるで縄で縛りあげるかのように、彼の体にと絡まり、宙に持ち上げた。 「間者め!」スティアが叫ぶ。 「貴様は何を知っている!何を行うつもりだ!」 語気荒れる彼女の言葉発せられる中、人間の肉の焼ける匂いが立ちのぼり、電気ショックでも喰らうように大きなけいれんを見せるアドベル。 だが、肉も焼けるほどの威力を食らったはずであるのに、息する程も苦しいともとれるゼヒゼヒ声も漏れるのに、…電撃に縛り上げられる彼の体は無傷そのものと言っていいほどに、艶々しい肌を見せていた。 「正直な答えを求める。答えねば、今のように、激痛と回復を間断なく食らわせる!」 スティアの激昂はあってしかるべく、…とも言わんレベルの怒号でもって、スティアがアドベルに詰問をした。 「全ての役目とはなんだ!」無言。 「あの塔での女はなんだ!」無言。 瞬間、部屋が瞬煌し、アドベルのくぐもった声が響いた。 「まさか、トゥア様も攫われる事も!」 「…スティア、お辞めなさい」 三度目ともなるかもしれないスティアへのイキリへ、ただ物静かな声でもって、クリスは中止を要請した。 「あなたのしている事には、一定の体を私も感じています。そして、…あなたの手段を瞬間でも、容認してしまった私も情けない…。…本当、情けない…」 そう、クリスは詫び、アドベルに頭を下げた。 「…言えない事情、が、あるのでしょう。本当に。もし、言えば、…それは、皆に及ぶ程の重大な何か…「「あと少しです」」を…。」 そこまで、言ったクリスの口を遮るように、アドベルは声を挟んだ。 「それが終われば、…すべてお話しします。それが、終われば…」 そして、再び、口を閉ざすアドベル。 「…わかりました。私は、私達は、何をすればよろしいのでしょか?」 アドベルの言葉を待っていたクリスだったが、一向に返答のない様に、小さく口を開く。 その彼女の言葉に、アドベルは口を開いた。 「アポロに、…アポロに、ガイストの軌跡を追わせてください。資料は、あなたのお父様、マグデス王の書斎にあります…。その際、私もアポロに同行させてください。お願いします」 |