=第三章=
[Oldie's Lost Trial]
第3話・赤の56標

 

「申し訳ありません…」少し息絶え絶えにスティアが口を開く。
「こんな不貞を晒すつもりは…なかったのですが…」
 出立時、早馬の馬車の揺れがよほどに応えたのだろう彼女の口ぶりに、馬車の後方の警戒に当たるアポロもまた、口を開いた。
「いえ、こちらも不慣れを気づかなかったんです。…もう少し、早く気づいていれば」
「でも、…急ぎも…」
「無理をなさらず、今は横になってお休みなられる方がいいですよ。…その不調も、日頃、日常的に多忙な事の疲れからだと思います。悪い言い方ではありますが、良い機会と考えて、今はゆっくりなさってください」
 そのアポロの言葉に、エディルもまた、「そうですよ。スティア様」と口添えし、ちょっと強引な感じでスティアを膝枕してみせる。
「たまには、こういった休息も大切ですよ。今は、アポロ様にアドベルもいらっしゃいます。突然の襲撃にも、いくらでもやってみせます。ご安心して、しっかりとお休みください」

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