=第三章=
[Oldie's Lost Trial]
第10話・赤の61標

 

 スティアは目を覚ます。そして、自分の違和感に気づく。
 確か、自分は馬車の中、エディルの膝枕で眠っていた。
 それが、なぜか、決して良い素材ではないが、揺れる馬車床に比べるべくもない、麻生地のベッドの上だった。
「起きられましたか?スティア様」
 少し戸惑いを覚えるそんなスティアの様子に、声をかける…、質素な椅子に腰を置いていたアポロが声をかける。
「アポロ殿、その…」
「ここは、オルトの住まい近くの灯台小屋です」
「灯台…小屋、…ぁあ、」
 アポロの言葉に、スティアが軽い理解のうなずきを見せた。
「夜間に森林に進入するのは危ないと判断して、少々遠回りですが、ここで一晩を済ませます」
「そうですか…。その、…」
 状況を理解したスティアがもう一言、…非礼…、を言いそうになったのを、「スティア様」と、アポロが言葉をさえぎった。
「お気にされずに、もしも、馬足を上げていても、結局は馬も疲れ、同じ結果になっていたでしょう。経路、人通りも少なくなっていた事もあって、道が少々悪くなっており、馬の疲労も大きかったようですので、結局は同じ経緯を辿ったでしょう」
「アポロ殿」

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