=第三章=
[Oldie's Lost Trial]
第11話・赤の62標

 

「エディルさん、変わりましょう」
 今は灯火もしなくなった灯台の最上、周囲を見渡すエディルに、階下から来たアドベルがそう声をかけた。
「…、…」
 その言葉にエディルは少し、思案するしぐさをみせ、「本当に、警護など必要あるのですか?」と、疑問符を投げかける。
 アドベルは、一瞬だけ言葉を詰めるが、周囲に顔を振った後、「万が一もありますよ」と、言った。
「万が一…ですか」
 エディルは問いただす。「万が一など、あるんでしょうか?」
 アドベルは無表情で、エディルを見返すにとどまり、そんな態度へ追従の問いただしを行った。
「正午辺り、あなたはアポロ様に申されましたね。襲ってこない。と」
「…、そうですね」
「それを勘と称しましたね」
「…、確かに」
「勘なんですか?今のも」
「…、今はそういう事にしていただけると助かります」
 問答はここで終わり、エディルは「今は、分かりました、と言っておきます」とだけ告げ、アドベルの横を通り過ぎる時、「その[今]が終わるのは何時なのでしょうね…」と囁き、階下にと向かっていったのだった。

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