=第三章=
[Oldie's Lost Trial]
第12話・赤の63標

 

「アドベルは、…私の物心が付く前からそばにいました」
 アポロがそう一言を言い、口を軽く噤む。しかし、二人からの言葉の反応がないのが分かると、再度、その重くも感じる唇を開いた。
「母も居ない、父も早い時期に死に、…頼れるのは、アドベルだけだった。自分の兄であり、父のような存在であり、親友でもあった…。…僕は、アドベルがいたから、今も生きていられた…」
 そこまで語り、口を閉ざす。そして、最後にこう呟いた。
「アドベルは。大切な人なんだ…」

 そして、その続く言葉に、二人は驚愕した。


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