=第三章=
[Oldie's Lost Trial]
第13話・赤の64標

 

「アドベルが言い出したんだ…。城の…、城の警備兵になる、と」
 唐突過ぎるアポロの言葉に、二の句を上げずにいる二人を前に、彼はさらに言葉を続けた。
「どうして、という問いにも、アドベルは何も言わなかった。ただ、一言。雲が呼んだ。と言っただけだった。」
 その言葉の中、エディルとスティアは「雲が呼んだ?」という言葉を小さく反芻し、お互いを見合わせる。…それは、聞き覚えのある…、クリス王女も口にした言葉だったからだ。
「僕を置いて、…城に向かうなんて、どうして?と何度尋ねても、ただ、悲しそうに笑うばかりで、…でも、僕は、独りになるのが怖くて、…怖くて」
 打ち震えるアポロ…。その言葉は、自らに投げかける独り言のように震え、震え…。
「僕は、…嫌だ。戦うなんて、戦えなんて、!僕は、独りもいやだ。父さんは首をつって死んだし、母さんは誰かも分からない。僕を見てくれるアドベルも居なくなる…嫌だ。僕は、独りもいやだ!独りは嫌だ!」
 その光景は、英雄等と言われる姿ではなく、ただただ大柄な巨体は小さく縮こまり、キリッとした顔つきもこの世の全ての情けなさを見せるように涙をし、泣きじゃくる子供のように、何度となく同じ言葉を繰り返す。

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