=第三章=
[Oldie's Lost Trial]
第16話・赤の67標

 

「剣の道化師…」
 アポロの言葉に、エディルは言葉を投げかけるが、…そこで押し黙り、…。部屋を後にした。
 スティアはそこまで聞いてもなお、アポロの背に身を預け、そして、こう言った。
「アポロ殿、…いえ、アポロ。悲しい事は言わないでください。私はあなたがとても素敵な人だと感じています。たとえ、争うのが嫌いでも、あなたは矢面に立ち、皆を救ったのです。どんな課程であれ、どんな道化であれ、あなたが皆を救い、希望を与え、そして、道を示しています」
「スティア様、…僕は、そんな立派じゃない。立派じゃない。僕はただ、剣に操られてるだけだ」
「…、」スティアは黙り、そして、それでも身をゆだねる。アポロに人の温かみを伝えるように。

 部屋を後にしたエディルは、廊下より見えるはずも無い灯台の上を見上げた。
「…雲への問い…」エディルはその言葉を漏らす。
 その言葉は、クリス王女がいつか口に出した言葉。それは、アドベルがした言葉。
「[今]が来れば、全てが分かるのですよね?」
 見えるはずもないアドベルの姿に問いただすように独りごち、そして、ゆっくりと自分の寝室にと取っていた部屋にと歩みを進めたのだった。

 その時同じく、灯台の上に居るアドベルは、「[今]はもうすぐです」と、…口に出す。
 もちろん、聞こえる距離ではない。ただ、エディルの言葉が聞こえたように、アドベルは、
  その言葉を口に出していたのだった。


次に進む/読むのを終了する