=第三章= |
「何をおっしゃられますか、アポロ殿」エディルがやさしく微笑む。 「アポロ殿も、私達と同じ人なのですもの。苦悩なさる事もございましょうし、弱音をつく事もございましょう。それに、上げ祭られてしまえば、簡単に本音も言えなくもなります」 エディルはそう言って、それから「クリス王女も同じく、ですわ」と、付け加えた。 「クリス王女も、まだ17歳。…本当でしたら、王として立つには、経験さえも足りていない。けれど、トゥア王女はあまりに幼い…。そう、今の事情、クリス王女が矢面に立ち、民衆を導かなければならないのです。…。」 エディルの言葉に、スティアもうつむき、…アポロは面を上げた。そして、背中越しではあるが、アドベルも顔を軽く背けるようなしぐさを見せる。 「弱音を吐かれてもかまいません。泣き言もかまいません。ですが、今の情勢、…保ちえるのは、クリス王女ばかりでは、ダメなのです。アポロ殿。…どうか、お力添えばかりをお願いいたします」 「…、…。…」アポロはただ少し、黙り、それから、ゆっくりと、そして悲しげに口を開いた。 「嘘っぱちでも、僕は勇者なのですね」 |