=第三章=
[Oldie's Lost Trial]
第20話・黒の44標

 

 陽も上がり、森林の中にも温かさが生まれる頃、馬車が止まる。
 その目先には、横に視線を向けても霞むほどにそびえる岩壁があり、その一角には大きな鉄扉が壁の中に埋まっていた。
「ここがオルト老子のお住まいになられている岩山ですね」
 先に降り立ち、鉄扉の前に立ったエディルがつぶやき、その手を添えた。
 長き年月でも経った為の腐食か、それとも別の何かか、…。鉄扉はかたくなな態度を見せている。
「スティア様、何か開錠の術をお持ちですか?」
「いえ、オルト老子については、禁とされているので…」
 エディルが振り返り、アポロに連れ添うように歩いてくるスティアに声をかけるも、彼女は首を横に振った。
「そうですか…」
 スティアの言葉にエディルも顔を曇らせる。…その二人を横に、アポロは歩み出て、…その手を鉄扉にあてた。

  ズン…

 という音が鳴り響き、…驚く3人を前に、ゆっくりと、その鉄扉の片方が人一人ずつならば、通れるほどの隙間を開ける。
「なるほど、…」エディルはアポロを見ながら、溜息をついた。
「アポロ殿が御用と分かれば、オルト老子もお顔を出していただけるのですね」

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