=第三章= |
反論のないアドベルの言い分に陣形を決め、その開かれた鉄扉にと、足を踏み入れる。 中は洞窟特融の臭いというべきか、淀みカビめいた感じの湿気が鼻を付き、…少々、スティアが口元を抑えるしぐさを見せる。 「スティア殿、大丈夫ですか」そのしぐさに気付いたアポロが腰元より一枚の柔らかい布を差し出した。 「農耕業でもこの程度の湿気やほこりがあるので、口隠しを用意する癖がありまして、…この程度でしたら、私は慣れています。よろしければどうぞ」 「…、あ、ありがとうございます」 差し出される布に、おずおずと受け取るスティアにアポロは微笑みながら、「後頭部に回す形で結って、鼻と一緒に隠してください」と、使い方を説明する。 言われるままに、スティアは口元と鼻を隠すと、…マントと相成って、目元ばかりが見える形になる。 その光景に、エディルがクスクスとコマっしゃくれた笑みを見せつつ、「あら、若いって、いいわね」と、うそぶいてみせる。 そんな言葉に、眼だけ覗かせるスティアは、少しばかりきつい視線をエディルに見せたりもしたが、プイっと、先頭にいるアドベルの背に向けた。 ただ、その抗議的態度は、魔法にも影響したのだろう。 ぷかぷかと浮かぶ光球の輝きが、若干、強いものを発したようにも見えたのだった。 |