=第三章=
[Oldie's Lost Trial]
第36話・赤の82標

 

「英雄といえば聞こえがいいけれど、人身御供かしらね」
 オルトの威厳か、何かに気おされたように、3人はその後、言葉なくしたように、オルトを見つめていたが、「もう済んだであろう。行け」という彼の言葉に、部屋を後にした。その扉を出た直後のエディルの感想が漏れた。その言葉に、残る二人も言葉もないようである。
「アポロ殿…」ふと、スティアが口を開いた。
「お逃げにならないのですね」
 その物言いに、アポロは首をスティアに向けた。
「城壁内での戦闘、あの後、アポロ殿は泣いておられましたね…。あれは、自分の存在を認識してたからでしょう」
 彼女の言葉に、アポロは表情を硬直させたが、…もの悲しげに、うつむき。そして、こう続けた。
「逃げたくても、もう逃げれないんだろうね。…それは、きっと兄さんについていくと決めた時から…」
 アポロの言葉に、二人は返すことはなく、…ただ、エディルが違う問いかけを二人に放つ。
「その原因ともいえる、アドベルは今どこに…いるのかしらね」

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