=第四章=
[ADOBEL]
第3話・赤の88標

 

 3人が再び、出来事のありさまに息を詰める、その中でも、アポロは動悸さえも止まる思いをもって、その光景を見つめる。
 貫かれたエラブはもう動かない…。その指先さえも、…ただ、やさしい風だけが、彼女の長い髪ばかりを揺らしていた。
 幾何かして、緊縛が解かれたように立ち上がる3人…。その背後の洞窟から、規則正しい土を踏む歩行音が聞こえてきた。
 振り返る3人の前に、…紅く長い髪をたゆませながら、アドベルが洞窟の奥より現れた。
 言葉も無く、アドベルを見る3人がまるで目に入っていないかのように、彼はその足音を土より草を踏み潰す音に変え、…エラブの前に立った。
 突き刺さる剣の柄を持ち、エラブを見据えるアドベル。
 そんなアドベルにエラブは…、にっこりと微笑んでみせる。その口元に一筋の血を滴らせて。
「そう、これがあなたの選んだ道なのね。アドベル…」
「はい」
「これは、貴方ばかりが責められる道よ。アドベル…」
「はい」
「そう…行きなさい…アドベル…、貴方の導きは、きっと誰も認めないけれど、誰もが望んだことだものね」
「…はい、!…」
 エラブはアドベルに笑いかけ、目を閉じた。…程なく、彼女の体に淡い翠色の光が灯り、徐々に形を崩し、…風の中にと散っていった。
 そして、アドベルは、その今起こったことが何事でもないかのように、背中にと大剣を納刀した。

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