=第四章= |
「なんで、」アポロの涙が再び、ボロボロとこぼれだす。 「なんで、兄さんが死なないといけないんだ」 子供のように、ただ駄々をこねる子供のように、アポロは泣いた。 「皆を救おうとしているのは、僕じゃない。兄さんだ。英雄として、讃えられるべきは僕じゃない!兄さんだろ!!なのに、なんで死なないといけないんだ!なんで、誰もそれを讃えないんだ! 僕じゃない!兄さんこそが英雄だ!」 アポロはただただむせび泣く。泣き崩れ、嗚咽を漏らす。 その姿に、アドベルは微笑みを浮かべ、少しばかりうれしそうな口ぶりで彼に語り掛ける。 「アポロ、君はガイストに似て、やさしいよ。僕の妹のために、怖がりながらもついてきたあの時と変わらない」 そして、アポロの頭をやさしくなでた。 「ありがとう。アポロが僕のために、泣いてくれることだけが、うれしいよ。だって、僕は君の父さんを見殺しにした。クリス王女をだまし、トゥア王女を怖い目に合わせ、城の人たちに不信感を与え、…何より、仲間でもある[AGOTOW]を殺して回ったんだ。アポロ、僕は英雄じゃない。卑怯者であり、間者であり、裏切り者であり、そして、ただの外道さ…。英雄になんてなれないよ」 撫でていた手を引き、「でも」と、アドベルは言葉をつづける。 「そんなやさしいアポロに[自由]を、[人間]から束の間であれ、[自由]を奪いとり、そんな君にあげれる。…それだけで、僕は自分がやった事は間違いではない。それがわかっただけで、満足だよ」 そして、アドベルは立ち上がり、「ここでお別れだ」といった。 |