=第四章=
[ADOBEL]
第22話・赤の107標

 

「嫌です」スティアは力強く拒否を述べた。
「あなたご自身が戻れば、良い。そうすれば、何の問題があるでしょうか」
「…僕は戻れません」
 まとめるものがなくなった紅い髪を夜風になびかせながら、昼の問答の続きのように、アドベルは首を横に振った。
「[AGOTOW]を生み出す装置は、同じく、生命維持装置でもある。壊すと言う事は、つまり、僕自身も生きてはいけない」
「ならば、壊す必要はない。共存の道を模索すればいい。同じ[超能力者]の末裔なのでしょう?」
 しかし、アドベルは首を横に振る。
「Adobizar、そして、ゲストと呼ばれる[AGOTOW]は全て、[人間]が調整して、生み出したもの。エラブのように、中には[超能力者]を殺し、体だけを奪う形もありますが…。調整のない[AGOTOW]は末裔でもなく、ただの魑魅魍魎です。言語も知能も持たない土くれです。共存それ以前であり、残っている限り、[人間]が物語を作るための口実を早めるだけになります。残しておくことなど、できはしない」
「嫌です!」
 アドベルの言葉に、スティアは拒否を示した。
 ただ、それは…。ただただ、感情的なもので、反射的に放った拒否だった。
 息荒いスティアの様子に、しばらくアドベルは黙り、口を開き、「…すべては、王国の…」と言いかけ、そして、止め。そして、言葉を改めて、彼はその言葉を述べた。
「貴方が命に代えても守りたかった、トゥア王女、そして、クリス王女のために…、僕を見殺しにしてください」

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