=第四章= |
「嫌です」スティアは力強く拒否を述べた。 「あなたご自身が戻れば、良い。そうすれば、何の問題があるでしょうか」 「…僕は戻れません」 まとめるものがなくなった紅い髪を夜風になびかせながら、昼の問答の続きのように、アドベルは首を横に振った。 「[AGOTOW]を生み出す装置は、同じく、生命維持装置でもある。壊すと言う事は、つまり、僕自身も生きてはいけない」 「ならば、壊す必要はない。共存の道を模索すればいい。同じ[超能力者]の末裔なのでしょう?」 しかし、アドベルは首を横に振る。 「Adobizar、そして、ゲストと呼ばれる[AGOTOW]は全て、[人間]が調整して、生み出したもの。エラブのように、中には[超能力者]を殺し、体だけを奪う形もありますが…。調整のない[AGOTOW]は末裔でもなく、ただの魑魅魍魎です。言語も知能も持たない土くれです。共存それ以前であり、残っている限り、[人間]が物語を作るための口実を早めるだけになります。残しておくことなど、できはしない」 「嫌です!」 アドベルの言葉に、スティアは拒否を示した。 ただ、それは…。ただただ、感情的なもので、反射的に放った拒否だった。 息荒いスティアの様子に、しばらくアドベルは黙り、口を開き、「…すべては、王国の…」と言いかけ、そして、止め。そして、言葉を改めて、彼はその言葉を述べた。 「貴方が命に代えても守りたかった、トゥア王女、そして、クリス王女のために…、僕を見殺しにしてください」 |