=第四章=
[ADOBEL]
第24話・赤の109標

 

「しゃべるべきではなかった」
 アドベルが口を開く。
「事実は、そのまま、僕がしゃべらずにいれば、スティア様もエディルさんも苦しむ事はないと分かっていたのに。自分が、何をしたのかを…どうしても、少しだけでも知ってもらいたい。そんな自分勝手で…」
「違う!」
 スティアが拒絶した。
「事実は知るべきです。事実を知らず、すべてが終わり、その時、初めて、…事実を知るならば、私たちは後悔する。なぜ、貴方を責めたのか、と…。そして、…そして、謝りたいと思っても、貴方がいないのですよ。これがどれほどの苦悩か…苦痛か、絶望か。教えてくれた事実があるからこそ、私は今あなたへ苦悩し、感謝し、謝罪できる」
 彼女は、涙があふれ、頬を濡らしていく。
「しゃべるべきではなかった、なんて、言わないでください」

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