=第四章=
[ADOBEL]
第27話・赤の112標

 

「エディルは、まだアドベルを怪しんでる?」
「いえ、…酷いことを言ってきたと、反省しています」
 エディルの言葉に、スティアは安堵のため息を見せ、言葉をつづける。
「エディル、…昨晩、アドベルが私に会いに来たわ」
「そうなのですか!?」
「トゥア王女に渡してほしいものがあると…会いに来たの。でも、こう言ったわ。全てが終わった後、あなた自身が合いに行きなさい」
「そうなんですか」
「エディル、あなたならどうする…。受け取る?」
「いえ、受け取りません。そのまま、首根っこを掴んでみせます」
「ふふ、だから、私を選んだのかもしれないわね」
 泣いていたことが、きっと心の濁りを少しでも流せたのだろう、軽やかではないが、幾分か、スティアの心には、余裕が生まれていた。
「私たちが言っても、きっと国民はアドベルを認めない。認めるのはアポロばかりでしょうね。それでいいと思う。事実はあまりに重い。きっと、この出来事が終わっても、国は騒乱するでしょう。そんな事、アドベルを悲しませるだけ…。私達のために、戦ったのに、自分のせいで私たちが争うことになるなど…あってはならない。絶対に」
「…そうですね」
「ありがとう、アドベル。最後まであなたは、私たちを助けてくれる…」
「…私はあえてないのですけど…」
「首根っこと、説教されるのを怖がったんでしょうね」
「んぐ…」
 ひとしきり朗らかに笑ったスティア。そして、唇を占める。
「もう、迷わない。物語を終えましょう。まだ、何か救える手立てはあるはず。クリス王女、トゥア王女、そして、アポロのためにも、絶対あきらめない」

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