=終章=
[終焉との決別]
第5話・黒の52標

 

「お初にお目にかかります。選ばれし英雄アポロ殿」
 3人が洞窟を進み、数刻。
 広く開けた、そして外界を大きく望める天井の吹き抜けを持つ、洞窟。その中央に悠然と立つ者が、響く声でもって、3人…その中でもアポロを名指して、語る。
「そのお力の前では、有象無象の輩ではもう意をなさないでしょう事は、先ほどの行動で分かっております。いやはや、父親に似てお強い事」
 左腕を銀の甲冑で包んだ、優男である。その様相からは、アポロと対峙すれば、あまりに貧弱な体躯であり、ともすれば、アポロの拳一撃でその首の骨が折れてしまうかのようにも見える。
 しかし、その表情は飄々としたもので、3人を道化師でも見るように嘲りの笑みを浮かべていた。
「さて、私が勝てば、国は滅び、貴方様が勝てば、国は救われる。が…」
 そう語りつつ。右の手の平を持ち上げ、すんっと振り上げた。瞬間、アポロの後方に立つスティア、エディルが肉の磔台に拘束された。
「何、このような勝負事。やはり、一人と一人が様になりましょう。さらに言わせていただければ、私の稚拙なる拘束魔法に捕まるようでは、足手まといというもの」
 そう語る男をよそに、「アポロ殿」と、スティアが声をかけた。
 見上げるアポロ。しかし、その眼差しは決意強く、しっかりとうなずき、…ゆっくりと男にと向き直った。
 そして、力強い足並みにて、闘技場とも思える洞穴の中央、男の元にと、歩き出したのだった。

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